抄録
大動脈弁位一葉傾斜機械弁下パンヌス形成による弁下狭窄に対して,CUSA(Cavitron ultrasonic surgical aspirator:超音波外科用吸引装置)を用いた経弁的パンヌス切除が有用であった症例を報告する.症例は77歳女性.30年前に大動脈弁狭窄症に対してBjörk-Shiley弁(23 mm)による大動脈弁置換術を施行した.今回,石灰化を伴う弁下パンヌス形成による重症大動脈弁狭窄症に対して手術の方針となった.術中所見では,機械弁に開放制限はなく,major orifice側の弁下パンヌスによる弁下狭窄が原因であった.バルサルバ洞の石灰化が著明であり視野不良で術野展開が非常に難しく,単純大動脈弁再置換術は困難と判断し,経弁的パンヌス切除を試みた.パンヌスは石灰化が著明であったためメスによる切除は不可能であり,CUSAを用いて弁下石灰化パンヌス切除を試行し,ほぼ完全にパンヌスを切除でき,弁下狭窄を解除することができた.術後大動脈弁通過流速は低下し,術後1年半となる現在まで流速の上昇なく外来経過観察中である.