日本補綴歯科学会誌
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原著論文
Cu含有量の異なる金銀パラジウム合金の接触腐食における腐食面のXPS分析
金子 広美金谷 貢小野 高裕野村 修一
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2015 年 7 巻 4 号 p. 371-379

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抄録

目的:組成が異なる,同種合金の接触による腐食の影響を調べることを目的として,Cu含有量の異なる金銀パラジウム合金の接触腐食実験を行い,X線光電子分光法によりその腐食表面を分析し,接触腐食における初期の腐食挙動を検討した.
方法:Cu含有量の異なる3種類の12%金銀パラジウム合金をプレート状に鋳造後,研磨し,試料の約半分の面積を2種類ずつ接触させてゴムで固定し,腐食溶液に8週間浸漬した.浸漬後,アセトンと超純水で試料を超音波洗浄し,X線光電子分光法により腐食表面の表面分析を行った.XPSで分析できる深さは約10 nmであり,今回の深さ方向の分析結果では,この範囲内で最表面およびその下を内部とした.
結果:肉眼的観察では,Cu含有量がより多い試料の接触領域の辺縁部で著しい変色が観察された.初期の化合物としてAg2O,PdO,CuO,Cu2SとCuSO4が考えられ,このうちPdOはCu含有量の多い試料でより内部まで検出された.Cuの化合物については,Cu含有量の多い試料ではCuSO4の割合が多く,内部に行くほどCuOとCu2Sの割合が増加した.Cu含有量の少ない試料では最表面から内部にかけてCu2Sが検出された.
結論:Cu含有量の異なる金銀パラジウム合金が接触している場合は,Ag2O,PdO,CuO,CuSO4とCu2Sが腐食の初期に生成される.

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© 2015 社団法人日本補綴歯科学会
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