2015 年 71 巻 2 号 p. I_871-I_876
2011年東北地方太平洋沖地震津波では,陸地への浸水を防ぐ海岸堤防が多数破壊され被害が拡大した.現地調査より,堤防の主たる破壊原因は,津波が堤防を長時間越流することによって引起こされた洗掘であると考えられる.さらに,堤防被害や洗掘規模と堤防背後の防潮林被害の関係から,堤防とその周辺の状況が,堤防被害に影響を及ぼす可能性があることが分かった.そこで本研究では,海岸堤防を越流する津波に対して防潮林が与える影響を水理実験により検討した.その結果,防潮林により堤防背後に流下する津波が射流から常流へと変化することが分かった.堤防裏法尻部に流下する流速が4割低減され,また堤防裏法肩部に作用する負圧が低減されることが分かった.以上より,背後に防潮林を有することで堤防周囲で生じる津波の挙動が変化し,越流する津波による堤防への被害を軽減し得ることが分かった.