2015 年 30 巻 6 号 p. 405-410
口腔外科手術における予防的抗菌薬投与に明確な指標はない.また適正使用に向けた取り組みについての報告も少なく,医療施設の特徴や術者の経験などに依るところが大きい.当科では2011年7月のICTラウンドを契機に,予防的抗菌薬投与が検討され,これまで多用されていたセフェム系第二世代に替え,セフェム系第一世代を推奨することにした.この変更が抗菌薬適正使用に向けた取り組みとして適切であったかを検証するため,2009年1月から2013年12月まで予防的抗菌薬投与症例(1,160例)の中で,140症例中8例(4.7%)とSSI発生が多かった悪性腫瘍症例を対象に,SSI発生を指標として調査を行った.全調査期間における悪性腫瘍SSI発生症例は,CEZ群3例(4.8%),CTM群3例(4.1%)であった.CEZ群とCTM群とのSSI発生に差がなかったことから,口腔外科手術でのSSI原因菌に対して,セフェム系第一世代でも第二世代と同程度にSSI発生を予防することが可能であり,第二世代から第一世代への抗菌薬の変更は適切であったことが示唆された.今後は予防的抗菌薬の投与期間,内服抗菌薬への切り替えに加え,抗菌薬以外のSSI発生の要因について検討を続けていく必要がある.