日本耳鼻咽喉科学会会報
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総説
難治性末梢動脈疾患に対する血管再生治療の最前線
宮本 正章高木 元久保田 芳明桐木 園子手塚 晶人太良 修平清水 渉福嶋 善光汲田 伸一郎田畑 泰彦
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2015 年 118 巻 11 号 p. 1281-1288

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抄録

 自己骨髄細胞を用いた血管再生医療は, 難病指定疾患である Buerger 病と閉塞性動脈硬化症 (ASO) の治療抵抗性症例に対して, 安全性に優れ有効性も証明され, わが国再生医療初の高度先進医療 (当時) として承認され, 現在も第2項先進医療技術 【先進医療 A】 に承認されている. さらに末梢血単核球細胞, 末梢血幹細胞を使用した血管再生治療も先進医療技術Aに追加承認された.
 血管再生治療 (先進医療承認) は, 末梢動脈疾患 (PAD) に対する経皮的血管形成術 (PTA), 末梢血管バイパス手術に次ぐ第3の治療法として認識されつつあり (Beyond TASC II), さらに厚生労働省難治性疾患克服研究事業の一つとして, 膠原病の中でも難治性潰瘍・壊疽を合併することが最も多い全身性強皮症 (PSS) に対して研究班で多施設共同研究を実施し, 安全性と有効性を証明した.
 さらに進化させた次世代型血管再生療法として, 血管形成に不可欠な塩基性線維芽細胞増殖因子 (b-FGF) をゼラチンハイドロゲルと混入し, 患肢筋肉内に注射するだけで血管再生可能な「DDS (薬物伝送システム) 徐放化 b-FGF 蛋白による血管再生療法 (2008年内閣府スーパー医療特区分担研究課題)」の臨床研究を実施して安全性と有効性を報告した.
 また最近では, 現在泌尿器科, 消化器外科等で実施されている結石破砕術の約10分の1の低出力 (約 0.09mJ/mm2) の衝撃波 (shock wave) を虚血患肢に当てるだけで血流増加を可能にする新治療法である低出力体外衝撃波治療による血管再生治療を臨床応用し, これも安全性および有意な下肢血流増加効果を証明した.
 このように血管再生治療は治療抵抗性 PAD に対して, 各種の臨床研究を通じて徐々に安全性と有効性が一般に認識され, PTA やバイパス術が不可能な難治性症例の最後に考慮され得るべき最新治療となりつつある.

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© 2015 一般社団法人 日本耳鼻咽喉科学会
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