日本外傷学会雑誌
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原著
外傷患者における冷汗の意義
-多施設共同前向き観察研究より-
湯本 哲也塚原 紘平飯田 淳義寺戸 通久佐藤 圭路鵜川 豊世武氏家 良人西村 哲郎定光 大海土谷 飛鳥植木 浜一高間 辰雄真弓 俊彦
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2016 年 30 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

 ショックを早期に認知するための皮膚所見の1つとして,外傷患者における冷汗の意義を多施設共同前向き観察研究にて検証した.出血性あるいは閉塞性ショックを離脱するためにinterventionを要した症例をショックと定義,冷汗は2人の観察医師が左右それぞれ4ヵ所を別々に評価し,少なくとも1ヵ所でも一致した場合を冷汗ありと定義した.来院時心肺停止,熱傷,転院搬送例を除外した外傷患者411例のうちショックは54例(13%),冷汗は36例(9%)に認めた.ショックで冷汗ありの症例は19例(35%)で,ショックに対する冷汗の感度,特異度,陽性・陰性的中率はそれぞれ35,95,53,91%であった.また,ショックで冷汗ありの症例はなしの症例と比較し,有意に頻脈で,Base excess(BE)が低く,乳酸値が高値であった.ショックに対する冷汗の特異度は高く,冷汗を認めれば介入が必要なショックと認識できる.また,早期認知のためには積極的に冷汗の所見をとりにいくことが重要である.

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© 2016 一般社団法人 日本外傷学会
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