2012 年 35 巻 1 号 p. 1_159-1_166
本研究は,がん患者の心理的適応に関する研究の動向を概観し,今後の課題を展望することを目的とする。がん患者の心理的適応状態は1983年の報告以降,大きな変化はない。しかし,がん患者のとらえ方は,1970年代初めにストレス・コーピング概念が導入されてから,医療を一方的に受ける弱い患者像から主体的に治療に取り組む患者像へと変化してきた。その後,1990年代に「意味」の概念が取り入れられた。意味の探索によって,がん患者は自分らしさをつくり変え,意味を見出すことで心理的適応を果たしていく。こうしたプロセスはわが国の研究成果でも示されており,欧米での研究成果と一致していた。欧米の意味研究は,すでに関連要因の探索や介入研究へと進展しており,今後,わが国でもそうした方向性への展開が必要であることが認識された。