2013 年 36 巻 2 号 p. 2_79-2_86
本研究の目的は,進行がん患者の家族が抱える苦しみを明らかにし,必要な看護支援の検討を行うことである。進行肺がんおよび悪性脳腫瘍患者の家族23名を対象として半構造的面接法によるデータ収集を行い,Krippendorffの手法を参考に質的帰納的分析を行った。その結果,進行がん患者の家族が抱える苦しみは,【患者が難治性のがんに侵されている現実を認知することで生じる苦しみ】【迫りくる患者の死を認知することで生じる苦しみ】【太刀打ちできないがんを患う患者と向き合い続けることで生じる苦しみ】【家族・社会システム内の不調和に伴う苦しみ】からなることが明らかとなった。進行がん患者の家族の苦しみは,受け入れがたい現実や逃れられない環境に起因するため認知的対処による処理が困難な苦痛であった。そのため,看護師は早期から家族とののパートナーシップを形成し, 十分な傾聴によって苦しみを癒すことの必要性が示唆された。