膵臓
Online ISSN : 1881-2805
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ISSN-L : 0913-0071
特集 膵疾患の分子病態
網羅的糖鎖解析によるIPMNの悪性度診断能の検討
秋元 悠能祖 一裕加藤 博也宮原 孝治水川 翔矢部 俊太郎内田 大輔關 博之友田 健松本 和幸山本 直樹堀口 繁堤 康一郎岡田 裕之
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2016 年 31 巻 1 号 p. 25-31

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抄録

糖鎖は,主として細胞表面に存在し細胞接着や情報伝達に関与している.癌に関しては,浸潤,転移の際に構造が変貌することが知られている.我々は,過去に膵癌,肝癌においてフコシル化多分枝糖鎖の高発現が診断や予後予測に有用であることを報告した.膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN)は,ガイドラインの絶対的手術適応にて切除しても,癌でない症例が約3~4割含まれている.膵切除のリスクを考えると術前診断能は十分とは言えず,新たなバイオマーカーの開発が求められている.我々はIPMNの悪性度診断における網羅的糖鎖解析の有用性を検討し,invasive IPMNでフコシル化多分枝糖鎖の発現が有意に高いことを報告した.興味深いことに,最も診断能が高かったm/z 3195糖鎖は,過去に我々が膵管癌の診断や予後との関連を示した糖鎖と同一であった.フコシル化多分枝糖鎖の高発現は,IPMNの悪性度診断に有用である可能性が示唆された.

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© 2016 日本膵臓学会
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