日本消化器内視鏡学会雑誌
Online ISSN : 1884-5738
Print ISSN : 0387-1207
ISSN-L : 0387-1207
資料
早期胃癌に対する内視鏡的範囲診断時の誤診寄与因子の検討
平山 慈子小田島 慎也後藤 修山道 信毅小野 敏嗣新美 惠子望月 暁今野 真己松田 梨恵皆月 ちひろ高橋 悠松坂 恵介牛久 哲男深山 正久藤城 光弘小池 和彦
著者情報
ジャーナル フリー

2016 年 58 巻 3 号 p. 201-209

詳細
抄録

<背景>内視鏡による早期胃癌の範囲診断を行う際に,範囲を同定するのが非常に難しい症例が存在する.本研究では,内視鏡的な範囲診断の誤診に寄与する早期胃癌の臨床病理学的特性を明らかにすることを目的とした.
<対象と方法>当院で内視鏡的粘膜下層剥離術(Endoscopic submucosal dissection:ESD)を施行した分化型早期胃癌431病変を対象とした.切除標本にて,病変周囲のマーキングと組織学的な腫瘍境界の位置関係を比較することでESD直前の内視鏡的な範囲診断の正誤を判定し,性別,年齢,腫瘍径,腫瘍の局在,周在,深達度,潰瘍瘢痕(UL)の有無,肉眼型,随伴0-IIb成分の有無,優位組織型,未分化癌の混在の有無,組織混在型か否か,NBI拡大観察併用の有無,を解析因子として,範囲診断の誤診寄与因子を解析した.また範囲診断を誤診した症例の内視鏡写真,プレパラートを見直し,誤診の要因について考察した.
<結果>全体での範囲診断の誤診率は7.4%(32/431病変)だった.多変量解析にて範囲診断の誤診に寄与する因子を解析すると,随伴0-IIb病変,大型病変,組織学的に中分化型腺癌優位な病変が有意な因子として抽出された.プレパラートにて誤診部位を見直すと,32病変中28病変(87.5%)では腫瘍辺縁が平坦だった.32病変中14病変(43.8%)では腫瘍辺縁は中分化型腺癌から成っていた.
<結論>ESD適応となるような早期胃癌において,随伴0-IIb病変,大型病変,中分化型腺癌は側方進展範囲を誤りやすい.

著者関連情報
© 2016 一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
前の記事 次の記事
feedback
Top