2016 年 43 巻 2 号 p. 311-315
稀な疾患である胎児心臓腫瘍を3例経験したので報告する.症例1は30歳の経産婦で,妊娠38週0日に当院へ紹介となった.胎児超音波検査では心室中隔から左心室内に径13 mm大の高輝度腫瘤を認め一部が左室流出路に突出していた.妊娠39週1日3,966 gの男児を経腟分娩した.日齢1に腫瘍切除術を行い組織診断は横紋筋腫であった.生後2ヵ月半の頭部MRI検査で結節性硬化症と診断され,てんかんを合併している.5歳の時点で腫瘍の再発は認めていない.症例2は30歳の経産婦で,妊娠29週5日に当院へ紹介となった.胎児超音波検査では左心室内,右心室内,右心房内にそれぞれ径14 mm,17 mm,5 mm大の高輝度腫瘤を認めた.妊娠39週5日2,866 gの女児を経腟分娩した.生後日齢3の頭部CT検査で結節性硬化症と診断され,てんかんを合併している.3歳の時点で腫瘍は不変である.症例3は36歳の初産婦で,妊娠19週5日当院へ紹介となった.胎児超音波検査では左心室内に径10 mm大の高輝度腫瘤を認めた.妊娠37週4日に3,006 gの女児を経腟分娩した.日齢13に心室頻拍を認め抗不整脈薬で治療を開始した.9ヵ月の時点で腫瘍は不変である.胎児心臓腫瘍の予後不良因子は腫瘍径20 mm以上,胎児不整脈,胎児水腫といわれている.胎児診断の重要性を再認識するとともに,更なる予後因子の検討のためにも症例を蓄積することは意義深い.