2005 年 28 巻 1 号 p. 1_73-1_82
本研究は,精神科看護師の入院中の精神疾患患者に対する認知とケア行動様式を分類し,有意味なパターンを記述することを目的にした。民間精神科病院5ヶ所に勤務する27名の看護師を対象に面接を行い,小記述民族学的手法を参考にデータを分析した。その結果,患者に対する認知として患者を「自分と同じ人」と考える看護師は,専門的ケア行動を実施し,「管理される人」と「かわいそうな人」とみなしている看護師は,業務がスムーズに遂行することに専念するか,患者を慰める行為を行い,専門的ケア行動は実施されない傾向があった。看護師のケア行動の選択に影響していた要因として仲間の存在,専門的技術や実行能力が備わっていることが抽出されたほか,病院組織内での自分の存在価値や自尊感情の維持があげられた。看護師は存在価値と自尊感情の維持ために防衛機制を用いており,それが患者に対する認知に影響し,その認知に基づいたケア行動を選択していた。