専門日本語教育研究
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報告
日本人大学生の書き言葉習得
初年次と3年次における調査結果の比較から
山路 奈保子因 京子藤木 裕行
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2013 年 15 巻 p. 47-52

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抄録

日本人学部学生の書き言葉習得状況を調査するため、話し言葉の文体や表現から論文やレポートなどに使われる書き言葉表現への置きかえを求める計60問のクイズを学部入学直後と3年進級直後の2回実施した。また、3年進級直後のクイズと併せて読む・書く経験に関するアンケートを実施し、1年次と比べてスコアが大きく上がった学生には、さらに、進歩の要因に関する自己分析を求めた。クイズのほとんどの設問について3年生時の正答率が高く、特に、専門書や論文などに特有の表現において大きな上昇がみられた。スコアが上昇した学生は、「目上の人へのメール・手紙」を書く機会を多く得ており、書いた文章に対する添削・批評を受けた経験のある者が顕著に多い。スコア上昇要因の自己分析では、大半が「レポートを多く書いた経験」を挙げ、具体的には「レポートを書く際の参考文献を通じて書き言葉的表現に慣れた」という回答が多くみられた。以上から、書き言葉表現の習得は、専門的文章を書く過程における専門分野の文献との接触と、適切な表現を期待する読み手に対する意識によって促進されることが示唆された。

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© 2013 専門日本語教育学会
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