2016 年 69 巻 5 号 p. 266-271
肛門管由来の腺癌細胞が連続性に隣接皮膚に進展するpagetoid spreadを伴った長径13.5cmの巨大肛門管癌の1例を経験した.症例は87歳,女性.2年前より肛門部のびらんおよび腫瘤を自覚していたが放置していた.徐々に腫瘤が増大したため,近医受診し肛門腫瘍の診断で当院紹介となった.腫瘍生検を行ったところ,消化管由来の粘液癌であった.肛門管粘液癌の診断で腹会陰式直腸切断術を施行した.
病理組織学的所見は,肛門周囲皮膚へのpagetoid spreadを伴う肛門管由来の粘液癌であった.術後47ヵ月を経過したが再発の徴候はない.
肛門周囲に発症したpagetoid spreadは,半数以上に肛門病変を認めるため,視診および皮膚生検の実施が重要である.pagetoid spreadを認めた際には癌腫の存在診断が困難な報告もあり肛門癌の存在を念頭におき治療することが重要であると考えられた.