日本歯科保存学雑誌
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原著
各種象牙質知覚過敏抑制材の象牙細管封鎖性について
—象牙質および外来刺激が及ぼす影響の検討—
清水 裕久星加 知宏西谷 佳浩𠮷山 昌宏
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2016 年 59 巻 3 号 p. 249-258

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抄録

 目的 : 象牙質知覚過敏症の発症メカニズムとして, 動水力学説が有力である. さまざまある象牙質知覚過敏症の治療方法の一つである歯質切削を必要としない保存療法においては, その治癒率が60~70%程度との報告があり, その原因として, 保存療法で頻繁に使用される象牙質知覚過敏抑制材の効果がなんらかの影響により象牙質で十分発揮されていないと考えた. 本研究では, 象牙質が象牙質知覚過敏抑制材に及ぼす影響を, 象牙細管内液の動きに着目して検討した. さらに, 象牙質からの影響だけでなく, 象牙質知覚過敏抑制材の象牙細管封鎖機構の違いにより, 外来からの刺激が象牙細管内液の動きに影響を及ぼすという考えから, 象牙質知覚過敏抑制材処置面に外来刺激を加えたときの象牙細管内液への影響を検討した.
 材料と方法 : 実験に使用した象牙質知覚過敏抑制材として, レジン被膜と歯質との接着により象牙細管を封鎖するレジン系材料と, 歯質などのカルシウム成分とシュウ酸から形成された結晶物により象牙細管を封鎖するシュウ酸系材料を用いた. 象牙質が象牙質知覚過敏抑制材に及ぼす影響として歯髄内圧の有無と象牙細管内液の違いを取り上げ, 象牙細管内液の移動抑制効果 (抑制率) を算出した. また, 象牙質知覚過敏抑制材処置面に加える外来刺激として乾燥刺激を取り上げ, 象牙細管内液の移動抑制効果 (抑制率) を算出した.
 結果 : 象牙質知覚過敏抑制材が処置される際に歯髄内圧が負荷されると, 象牙質知覚過敏抑制材によっては抑制率が有意に低下する材料があった. 象牙細管内液に蒸留水または擬似体液を使用したときの象牙質知覚過敏抑制材効果への影響はほとんどみられなかったが, シュウ酸系材料において, 擬似体液を象牙細管内液に使用したとき, 蒸留水を象牙細管内液に使用したときには確認できなかった結晶様構造物が確認できた. 象牙細管封鎖機構が異なる象牙質知覚過敏抑制材の処置面に加える乾燥刺激の影響について, レジン系材料とシュウ酸系材料における抑制率の間に有意な差が確認できた.
 結論 : レジン系材料とシュウ酸系材料の2種の象牙質知覚過敏抑制材について, 象牙質知覚過敏抑制材は歯髄内圧の影響を受けやすく, 象牙質知覚過敏抑制材の象牙細管封鎖機構の違いによっては, 乾燥刺激が象牙細管内液の移動に影響を及ぼすことが示唆された.

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© 2016 特定非営利活動法人日本歯科保存学会
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