日本東洋医学雑誌
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臨床報告
小児の過敏性腸症候群に対して鍼灸治療が有用であった1症例
松本 淳村田 一知朗宮崎 渚西脇 亜由子名和 隆英牛越 博昭湊口 信也
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2016 年 67 巻 2 号 p. 144-149

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抄録
症例は腹痛と下痢を主訴とする10歳女児。7歳時から腹痛を伴う便通異常が出現した。症状が持続するため,小児科や消化器内科にて入院・精査され,IBS と診断された。投薬治療を受けたが著明な改善が見られないため鍼治療開始となった。
鍼灸治療開始時の排便回数は1日5回から10回,便性状は軟便が主であり,強い便意切迫感,排便時腹痛を伴い,なかなかトイレから出られない,学校の早退,食事に対する不安などの生活の質(QOL)の低下を認めた。鍼灸治療開始後に腹痛の軽減傾向と排便回数の減少傾向が得られた。消化器症状QOL 評価表であるGastrointestinal Symptoms Rating Scale の下痢と便秘の尺度は鍼灸開始後2ヵ月後には減少し,治療を継続した1年後まで初診時より良い値を示した。鍼灸開始後に症状と QOL の改善傾向が得られたことから,本症例に鍼灸治療が有用であったと考えられた。
引用文献 (32)
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© 2016 一般社団法人 日本東洋医学会
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