2016 年 65 巻 2 号 p. 254-260
アンドロゲン抑制療法による重篤な耐糖能の悪化症例は以前より報告されている。一方,糖尿病性舞踏病では,主に高血糖状態において片側あるいは両側の舞踏病様の不随意運動が出現し,頭部MRIが診断に有用である。今回,前立腺癌のアンドロゲン抑制療法開始後に著明な高血糖を呈し,糖尿病性舞踏病を発症した症例を経験したので報告する。症例は71歳,男性。前立腺癌の診断にて,ビカルタミド内服と酢酸リュープロレリン皮下注を開始した。開始時のHbA1cは食事療法のみで6.6%であった。その後,右上肢の不随意運動が出現,随時血糖が691mg/dl,HbA1c 19.5%であったため当科紹介となった。当科における酢酸リュープロレリンの中止とインスリン療法の開始により,高血糖は速やかに改善した。一方,不随意運動は,入院時の生理食塩水点滴により消失したが,血糖値改善後に再燃した。