抄録
症例:62歳女性。直腸癌およびその肺転移に対し,高位前方切除および肺部分切除を行なった。術後化学療法後に経過観察中であったが,咳をすると肉片が出ると訴え当院を受診した。耳鼻科における喉頭ファイバースコープ検査で異常所見はなかったが,胸部CT画像では気管支内腔に突出する結節性病変を認めた。気管支鏡検査では気管支壁からポリープ状に突出し,気管支壁から容易に剥離・脱落する多発粒状結節性病変を認めた。同部位より直視下経気管支生検を行ない,大腸癌の気管支内転移と診断,抗癌薬治療を開始した。結語.肉片の喀出をきっかけに,大腸癌の気管支内転移が発見された稀な症例であった。気管支鏡所見は非常に珍しく,気管支壁と癒合傾向が非常に弱く,容易に脱落する腫瘍が多発していた。大腸癌術後に繰り返す肉片の喀出を主訴に受診した患者に対して大腸癌気管支内転移を念頭におき,早期に画像検査と気管支鏡検査を考慮する必要があると考えられた。