症例は特記すべき既往のない19歳男子大学生。16歳の時に明らかな誘因なく1日に10回以上嘔吐を繰り返し,経口摂取不能のため近医入院の上,点滴加療を受けた。発作間欠期にはほぼ無症状だが,以後年に2~3回,激しい嘔吐のために1週間程度入院するようになった。その都度精査を受けたが,脱水を認めるのみで他に明らかな異常を認めなかった。19歳を過ぎた頃より毎月入院するようになったため,精査目的に当院紹介受診となった。西洋医学的には特記すべき異常を認めず,周期性嘔吐症候群と診断した。漢方医学的には,気鬱・気逆と診断した。半夏厚朴湯を処方したところ,自覚症状は著明に改善し,内服開始から半年が経過したが嘔吐発作は出現していない。 気鬱・気逆を伴う強い嘔吐症状を半夏厚朴湯が予防する可能性があり,機能性消化管障害に対する漢方薬の有効性が示唆された。