2017 年 46 巻 5 号 p. 226-230
症例は61歳,男性,急性心筋梗塞の診断で当院循環器内科にて経皮的冠動脈形成術(Percutaneous Coronary Intervention ; PCI)を施行され,入院加療,経過観察中に心臓超音波検査において左室流出路に入院時には認めていなかった可動性塊状エコーを認めた.抗凝固療法を行った後に待機的に摘出術を計画,慢性心房細動もあり,経過中に胸部症状の再燃を認めたため,心停止体外循環下に腫瘍摘出とあわせて冠動脈バイパス,full maze手術を施行した.大動脈弁ごしに左室流出路を検索,右冠尖と無冠尖の交連の弁下流出路側,膜性中隔に小豆大の可動性腫瘤を認め,これを心内膜付着部位より切除摘出した.病理組織検査で摘出標本は多数の石灰化結節や血性浸出液の混在した線維素沈着よりなる線維性コラーゲン性組織で悪性所見は認めなかった.無形性腫瘍性病変(calcified amorphous tumor ; CAT)は変性や一部慢性炎症を伴う無形性な線維性組織を背景とした石灰化結節よりなる非腫瘍性心臓病変であり,末期腎不全患者の僧帽弁輪高度石灰化症例(mitral annular calcification ; MAC)にしばしばみられる.可動性があるものについては“swinging calcified amorphous tumor”と称され塞栓症の高リスク群であるとの見解もあり左室流出路(Left Ventricular Outflow Tract ; LVOT)に発生するものに関しては非定型的であり報告は稀である.