抄録
医療系学生にとって,チーム医療に対する理解とその実践について学ぶ事は重要である.そのような視点を学部教育に取り入れることの必要性は高いが,適切なモデルはいまだ不足している.神戸大学医学部医学科と保健学科は,初期体験臨床実習をチームで行う事を2007年から開始した.翌年には,薬学部の学生もそこに参加し,現在に至っている.また1年次だけでなく,4年次にはチーム医療を学ぶカリキュラムを導入し,そこでは多職種協働教育に基づいたチュートリアルを実施している.多職種協働教育の歴史は浅く,例も少ないため,教員が繰り返し意見交換を行ってプログラムとチュートリアルのシナリオを作り上げていった.また,教員による模擬チームカンファレンスも導入し,学生のシナリオに対する理解を深める一助とした.このプログラムを通して,学生だけでなく教員も他の職種に対する理解が深まった.多職種協働教育は,将来チーム医療に貢献する医療従事者の人材育成に必須である.今後は医療だけでなく福祉の視点取り入れ,地域医療に根ざした医療人育成を行う必要がある.